東京から私の実母ハム子さんを呼び寄せ、1ヶ月のお試し同居を始めた私と夫。お互い大丈夫そうなら、引っ越して同居を始める予定です。今言ったこともやったことも忘れてしまうハム子さん。
夜な夜な居間を模様替えしていたのが前回の話でした。
認知症の母の生活音問題——ドアをバタン、廊下をドスドス
最初のうちハム子さんは、トイレに行こうとして押し入れを開けたりしていましたが、すぐに迷わず行けるようになりました。居間から出ると、目の前がトイレだから、探さずに済みます。
問題は、ドアを閉めたり歩いたりする生活音がやたら大きいこと。バタン!とドアを閉め、ドスドス歩く音が響きます。
妹との住居も、父と二人暮らしだった時も、そういえば1階でした。
ここは団地の5階だから、との説明に
「わかった、ごめん」
などと答えますが、やっぱり忘れます。
事前に下の階の方に挨拶していたとはいえ、これは迷惑なのでは…。妹は、普段はそれほど音を立てていないと言います。不安から、私はここにいるよ!と無意識に伝えようとしている音なんでしょうか?わかりませんが…。
ドアには隙間テープのような緩衝材を貼りましたが、上から下まで貼ると、今度はドアが閉まりません。小さく切って数ヶ所貼りましたが、気休め程度です。床の方は、何か敷くとつまずくなどの危険性があるので、断念しました。
トイレに行くときに
「ドアは静かに閉めてね」
と言ったところで、出る頃には忘れています。夫は
「しゃーないんちゃう?高齢者がいるってわかってるから、下の階の人も大目に見てくれるやろ」
と…。受け入れる夫、何とかコントロールしようとする私、の構図は現在も変わりません。
車に乗る前、記憶がリセット——焼き物もココアも記憶にない
紅葉の景色を見せてあげたかったので、よく一緒にドライブに行きました。一度、立杭陶の郷(たちくいすえのさと)に行った時のこと。二人で焼き物の展示や販売をゆっくり見て回りました。
「これきれいね」「これは10万円だって!」
と、ハム子さんもあれこれ見て楽しそう。最後にレストランでハム子さんは黒豆ココア、私は黒豆コーヒーをいただいて、大満足の時間を過ごしました。
レストランから出て、景色を楽しみながら駐車場に向かって歩きます。
「焼き物が色々見られて面白かったね」
と言うと、
「焼き物見たっけ?」
という答えが。
「ちょっと待って、ココア飲んだことは覚えてるよね?」
「飲んだのかな?覚えてない」
…さすがに呆然としました。
「何なら、ココアの味が残ってるでしょ?さっき飲んだんだから」
「わかんない」
…今の数時間は一体…。楽しい時間を一緒に過ごしたことには変わりないんだから、それでいいじゃないか。いいじゃないか。と自分に言い聞かせながら、帰り道はドッと疲れていました。
認知症で記憶は残っていなくても、楽しい感情は残っていると言います。「楽しかったね」と共有できなくても、自分は覚えてる訳だし、ご機嫌でいてくれたらそれでいい…。と、頭では考えるものの、きれいに何も残っていないのを目の当たりにすると、切なくなるものですね。
お試し同居を終えて——2ヶ月後に本格同居へ
1ヶ月が過ぎ、家族と相談の末、ハム子さんと私達夫婦は、実際に同居することになりました。さぁ、引っ越しです!次回は同居スタートまでの話をお届けしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!次回もお付き合いいただけたらうれしいです。

